犬同士で遊ぶ経験が、噛まない犬を育てる


目次


なぜ今、「噛み」に悩む飼い主さんが増えているのか

「甘噛みがひどくて困っています」
「大人になっても噛む癖が治らないんです」

これは、私がこれまで数えきれないほど聞いてきたご相談です。

昔と比べて明らかに“噛み”で悩む飼主は増えたと感じるのは、

人と犬の関わり方や飼育環境の変化にあると思います。

室内飼いが当たり前になり、
他の犬と関わる機会が極端に減ったこと。

さらに、

「噛ませてはいけない」
「すぐに止めさせるべき」

という情報が広まりすぎたことで、

本来必要な経験まで奪ってしまっているケースが多いと感じています。

実は、子犬の「甘噛み」は問題ではありません。
むしろ、とても大切な“学びの入り口”なのです。

▶関連記事:
子犬の甘噛みについて正しく理解する


犬の社会性とは何か?2つの重要な視点

私は犬の社会性を、2つの視点で考えています。

① 人間社会への適応力

今の日本では、犬は人間社会の中で生きていくしかありません。

人を怖がる犬。
逆に、人を怖がらせてしまう犬。

どちらも結果として、
周囲から「扱いにくい存在」と見られてしまいます。

そうなると、外出も制限され、
生活の幅がどんどん狭くなってしまう。

それは、犬にとっても飼い主さんにとっても、
とても辛いことではないでしょうか。

② 犬同士のルール

そしてもう一つが、犬同士のルールです。

本来、犬は群れで生きる動物です。
その中で自然と、

  • どこまで噛んでいいのか
  • どのタイミングでやめるべきか
  • 相手の気持ちをどう読むか

を学んでいきます。

しかし現代では、その「犬社会」が失われています。

だからこそ意識的に、
犬同士で関われる環境を作る必要があるのです。


犬同士の遊びが教えてくれる「噛み加減」

犬同士が遊ぶ中で、必ず起こるのが「噛み合い」です。

ここで重要なのは、
“噛むこと”ではなく“噛み方”です。

例えば、強く噛みすぎた時。

相手の犬は「キャン!」と鳴いたり、
遊びをやめたりします。

すると、噛んだ側の犬は学びます。

「今のは強すぎたんだな」
「このくらいにしないと遊びは続かないんだな」

この繰り返しによって、
自然と“噛み加減”が身についていきます。

これは、人間が教えようとしても
なかなか再現できるものではありません。

参考:
ASPCA(アメリカ動物虐待防止協会):犬の攻撃行動と社会化の重要性

つまり、遊びはただの遊びではなく、
「社会で生きるためのトレーニング」なのです。


人間では教えきれない理由

「噛んだら叱る」
「無視する」

こうした方法を試された方も多いと思います。

もちろん、場面によっては必要な対応です。

しかし、これだけで
“噛まない犬”に育てるのは難しいと感じています。

なぜなら人間は、犬ではないからです。

犬同士の微妙なボディランゲージ。
遊びの中での駆け引き。
力加減のリアルなフィードバック。

これらは、犬同士だからこそ成立するものです。

人間ができるのは、
あくまで環境を整えること。

そして正しい経験へと導くことなのです。


社会性不足が引き起こす未来

社会性が不足したまま成長すると、どうなるでしょうか。

  • 他の犬を見ると過剰に興奮する
  • 怖くて逃げる、または攻撃する
  • 人に対しても警戒心が強くなる

こうした行動が積み重なると、

「問題行動のある犬」として扱われ、
飼い主さん自身が疲れてしまうケースも少なくありません。

最初は「可愛い甘噛み」だったものが、
やがて「本気噛み」に変わってしまう。

これは、決して珍しいことではないのです。

参考:
AVMA(アメリカ獣医師会):犬の社会化が行動に与える影響

だから私は、
“問題が起きてから対処する”のではなく、

“問題が起きない育て方”を
もっと多くの方に知っていただきたいと考えています。


安心して遊ばせる環境の大切さ

とはいえ、

「どこで犬同士を遊ばせればいいの?」
「ケンカになったら怖い…」

そう感じるのも当然だと思います。

だからこそ大切なのが、
安全に管理された環境です。

  • 相性や性格を見極めること
  • 無理な接触をさせないこと
  • スタッフがしっかり見守ること

このような条件が整うことで、
犬は安心して学ぶことができます。

ただ遊ばせるのではなく、
“学びのある遊び”にすること。

これが、社会性を育てる上で非常に重要です。


今からでもできる社会性の育て方

「もう成犬だけど遅いですか?」

このご質問もよくいただきます。

結論から言うと、遅くはありません。

ただし、子犬期に比べると
時間と配慮が必要になります。

  • 無理に近づけない
  • 少しずつ慣らしていく
  • 成功体験を積み重ねる

この積み重ねが、
やがて大きな変化につながります。

そして何より大切なのは、
飼い主さんが安心して取り組めることです。

情報があふれる今の時代、
「これでいいのかな?」と迷うことも多いと思います。

そんな時こそ、

  • 犬の本来の性質に立ち返ること
  • 実際に現場で積み重ねられてきた経験を信じること

これが一つの指針になるのではないでしょうか。

犬同士で遊ぶ経験は、
単なる遊びではありません。

それは、
“噛まない犬を育てるための最も自然な教育”です。

そしてその結果、
ご愛犬が落ち着いて過ごせるようになった時、

きっとあなたの毎日は、
今よりもっと穏やかで幸せなものになるはずです。

中島秀輔
ワンズアップ株式会社 代表取締役
犬の幼稚園&トリミング「犬幸村」 代表 中島秀輔

犬の幼稚園「犬幸村」園長 中島秀輔 1986年から約26年間、ペット関連の事業を行う。



横浜そごう、玉川高島屋、グランベリーモール、六本木ヒルズなど、首都圏の百貨店等に店舗を出店しているDOG&CAT JOKERにおいてトリマー兼店長兼店舗統括部長として店舗運営に携わる。



2000年に「ワンニャン幼稚園🄬」設立。業界初の子犬子猫にしつけを教えて販売するスタイルを発案し、JOKER各店にて子犬子猫生体販売の常識を変革する。



トリマーとして各種競技会に挑戦し、SUPER ZOO inラスベガス スーパーモデルドッグ部門3位入賞、JKCトリミング競技会東京ブロック Aクラス最優秀賞受賞。その後全国トリミング・家庭犬訓練競技会 デザインカットコンテスト、ジャペルペットコレクショントリミングコンテストにおいて審査員を務める。

ハンドラーとしてJKCハンドリング競技会全国大会Aクラス最優秀賞受賞。



これらの経験・知識を活かし独立。その後大小200を超えるセミナーも開催し、延べ3,000人以上のトリマーへの指導経験も持つ。



現在は、新潟の燕三条で犬の幼稚園&トリミング犬幸村(けんこうむら)をオープンさせ、延べ1000頭以上のワンちゃんや猫ちゃんへ、飼い主様へ「心の平安」を提供している。

保有資格: ・JKCハンドラーA級ライセンス ・JKCトリマーA級ライセンス ・愛玩動物飼養管理士1級
犬同士が遊びながら噛み加減を学び、社会性を育てている様子

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