「爪切りをしようとすると暴れてしまう」「触られることが苦手で、トリミングを受けられない」。そんな悩みを抱えて、犬幸村へ相談に来られる飼い主さんがいます。
怖がる子、嫌がる子、抵抗が強く出る子。犬幸村では、その子が何を感じ、どこまでなら受け入れられるのかを見ながら、少しずつ慣れてもらうことを大切にしています。
少し頑張れたところで褒めて、いったん解放する。その小さな経験を繰り返しながら、その子に合わせて段階を進めていく。今回は、犬幸村がトリミングで大切にしている考え方と、実際の取り組みについてお話しします。
嫌がる気持ちの背景を見ながら進める
同じ「爪切りが苦手」という悩みでも、困っていることは一頭ずつ違います。
足先に触れられることが苦手な子もいれば、道具が近づくことや、体の動きを制限されることに不安を感じる子もいます。過去の経験だけでなく、痛みや体調の変化が関係している場合もあります。
怖さの表れ方も、受け入れられることも、その子によって違います。犬種だけで決めつけず、目の前の子の様子を見て考えることが出発点です。
暴れるという反応の奥に、怖い、離れたい、触られたくないという気持ちがあるかもしれません。その背景を考えながら、関わり方を探していきます。
少し頑張れたところを褒めて解放する
犬幸村では、一つのことを最初から全部求めず、その子が受け入れられる小さな段階に分けて考えます。
その中で、その子なりに少し頑張れた場面を見つけて褒めます。そして手を止め、いったん解放して、そこで区切りをつけます。
「ここまで頑張れたね」と伝えて終える。そうした経験を繰り返し、様子を見ながら少しずつ次の段階へ進めていきます。
大切なのは、その子にとって無理のない大きさで経験を重ねることです。一度できたからといって、すぐに求めることを増やすのではなく、その子の様子に合わせて進めています。
その日の様子に合わせて区切る
「少し頑張る」の程度は、どの子にも同じように当てはめられるものではありません。
声を出さず動かないときも、安心しているとは限りません。体が硬くなる、顔をそらす、逃げようとするなどの変化も見ながら、取り組む内容の難しさと、終えるタイミングを調整します。
強い恐怖や抵抗が続くときは、続ける内容を見直し、必要に応じて中断して負担を減らすことを優先します。その日の状態によって、前にできたことでも難しい場合があります。
また、痛みや体調の問題が疑われるときや、強い恐怖が続くときには、獣医師への相談や連携も必要です。安全に受けられるケアを考えることも、トリミングに向き合ううえで大切にしています。
飼い主さんと約半年取り組んだある柴犬の話
以前、爪切りを強く嫌がる柴犬について、ご相談をいただいたことがあります。飼い主さんは、これからどうお手入れを続ければよいか悩んでいらっしゃいました。
私たちは、飼い主さんにも協力していただきながら、触れられることから少しずつ慣れてもらう取り組みを続けました。約半年をかけて、触ること、そして爪を切ることにつなげていきました。
今では、抱っこされた状態でも落ち着いて爪切りを受けられるようになっています。
もちろん、これはその子の経過です。どの子も半年で同じようになる、という意味ではありません。必要な時間も、進められる内容も、それまでの経験や体調によって違います。
この経験から、私が改めて大切だと感じたのは、飼い主さんと一緒に、その子が受け入れられる経験を重ねていくことでした。
飼い主さんと一緒に積み重ねる
少しずつ慣れてもらう取り組みでは、飼い主さんの協力も大切です。
飼い主さんが知っている普段の様子や、これまでのお手入れの経験は、その子を理解するための大切な手がかりになります。犬幸村での様子と合わせて考えることで、その子に合った進め方を探しやすくなります。
すぐに結果を求めたくなることもあると思います。だからこそ、できるようになった小さなことを一緒に見つけながら、その子のペースを大切にしていきたいと考えています。
これからも安心して通える関係を目指して
トリミングは、これからの暮らしの中でも続いていくものです。仕上がりとともに、その子がどのような気持ちで過ごせたか、その経験が次のお手入れにどうつながるかも大切にしています。
犬幸村のミッションは、
「吠える・噛むから飼い主の挫折を防ぎ、犬の心と体の負担をゼロに」
です。
少し頑張れたところを褒めて解放し、小さな経験を重ねていく。その子の様子を見ながら区切り、飼い主さんと一緒に進んでいく。これが、怖がる子や嫌がる子と向き合うときに、私たちが大切にしていることです。
愛犬の爪切りやトリミングで困っている方は、これまでの経験と、今いちばん困っていることをお聞かせください。その子に合った進め方を一緒に考えます。
犬幸村 代表 中島秀輔
参考資料
安全性に関する説明は、次の獣医療専門機関の資料を参考にしています。
