「慣れさせる」と「怖がらせる」は紙一重

〜愛犬の社会性を育てるうえで、本当に大切なこと〜

「社会化が大切です」
最近では、本やYouTubeでもよく聞く言葉になりました。

ですが私は、約40年この業界に携わる中で、ひとつ気になっていることがあります。

それは、
“慣れさせよう”として、逆に犬を怖がらせてしまっているケースがとても増えていることです。

特に今は、情報が溢れています。

「ドッグランに行けば社会化になる」
「たくさん人に会わせた方がいい」
「怖がっても経験させれば慣れる」

確かに間違いではありません。
ですが、その“やり方”を間違えると、犬は「慣れる」のではなく、「我慢する」ようになります。

そしてその積み重ねが、
将来の吠え・噛み・震え・逃避行動へと繋がっていくことも少なくありません。

今回は、
「慣れさせる」と「怖がらせる」の違いについて、現場で感じてきたことをお伝えしたいと思います。

目次


社会性とは「平気になる力」ではない

社会性というと、多くの方は、

「どんな人にも平気で近づけること」
「どこへ行っても堂々としていること」

そんなイメージを持たれているかもしれません。

ですが私は、社会性とは
“無理をしないで人間社会で暮らせる力”
だと考えています。

例えば、人が苦手な犬がいたとしても、

  • 吠えずにその場にいられる
  • パニックにならない
  • 飼い主のそばで落ち着ける

それだけでも十分素晴らしい社会性です。

逆に、一見フレンドリーに見えても、

  • 実は強い緊張状態
  • 恐怖からの興奮で感情が振り切れている

そんなケースも少なくありません。

犬は言葉を話せません。

だからこそ私たち人間が、
「この子は今、本当に安心しているのか?」
を見極めてあげる必要があるのです。

また、犬の社会化については、
アニコム「犬の社会化期とは?」
でも、子犬期の経験の重要性が紹介されています。


怖がっている犬に“経験”を押し付けていませんか?

私はこれまで、たくさんの飼い主さんからこんなご相談を受けてきました。

「社会化のためにドッグランへ連れて行ったら、逆に犬嫌いになってしまいました」

「慣れさせたくて人混みに行ったら、震えるようになりました」

これは決して珍しいことではありません。

なぜなら犬にとって、
“怖かった経験”は非常に強く記憶に残るからです。

特に子犬期は、人間の子どもで言えば幼稚園児のような時期。

そんな時期に、

  • 大きな犬に追いかけ回される
  • 無理に抱っこされる
  • 知らない人に囲まれる
  • 怖がっているのに逃げられない

こうした経験をすると、

「世の中は怖い場所なんだ」

と学習してしまうことがあります。

環境省も、犬の適切な社会化や飼育環境の整備が問題行動の予防に繋がることを示しています。

参考:
環境省「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」

つまり社会化とは、
“刺激を与えること”ではなく、
“安心して経験できること”
が大切なのです。


「慣れたように見える犬」が実は危険なこともある

ここでひとつ、とても大切なことがあります。

それは、
犬は“諦める”ことがある
ということです。

怖い。
逃げたい。
でも逃げられない。

そんな経験を繰り返すと、犬は感情を出さなくなることがあります。

すると人間側は、

「慣れたんだ」
「落ち着いたね」

と思ってしまう。

ですが実際は、
“我慢しているだけ”
というケースもあるのです。

特に、

  • 表情が固い
  • 目を合わせない
  • 動きが少ない
  • 呼吸が浅い
  • 体がこわばる

こうしたサインが見られる時は注意が必要です。

犬は限界を超えると、
ある日突然噛むことがあります。

だから私は、
「大人しい=安心」
とは限らないと感じています。

本当に安心している犬は、
表情が柔らかく、
自然体で、
飼い主を信頼しています。

そこを見極めてあげることが、とても重要なのです。

また、「噛み」に悩む飼い主さんは非常に増えています。

知ってほしいのは本気噛みと子犬の甘噛みは原因が全く違うということです。
関連記事:
子犬の甘噛みについて


犬に必要なのは“安心できる成功体験”

では、どうすれば犬は社会性を身につけられるのでしょうか。

私は、
“小さな成功体験の積み重ね”
が何より大切だと考えています。

例えば、

  • 人を見ても怖くなかった
  • 他の犬と少し挨拶できた
  • 外を歩いても落ち着けた
  • 初めての場所でも飼い主と一緒なら平気だった

こうした経験が、
犬の「大丈夫かもしれない」を育てます。

逆に、

「慣れさせなきゃ」

と急ぎすぎると、
犬の心が追いつきません。

人間でも同じですよね。

苦手な場所へ無理やり連れて行かれたら、
安心するどころか、
ますます嫌いになるはずです。

犬も同じです。

だからこそ私は、
“頑張らせる社会化”
ではなく、
“安心を積み重ねる社会化”
を大切にしています。


犬同士だから学べることがある

そしてもうひとつ、
私たちがとても大切にしているのが、
犬同士の関わりです。

今の時代、犬同士で自然に遊ぶ機会は本当に減りました。

ですが本来、犬は犬同士の中で、

  • 距離感
  • 遊び方
  • 相手への配慮
  • 噛み加減
  • 空気の読み方

を学んでいきます。

人間が教えられることには限界があります。

だからこそ、
安心できる環境で、
相性を見ながら、
犬同士が自然に関われることが重要なのです。

無理やり遊ばせるのではありません。

怖がっている犬を囲ませることでもありません。

「この子なら安心」
という経験を少しずつ重ねることで、
犬は他者への信頼を育てていきます。

また、犬との暮らしやルールづくりについては、
一般社団法人ジャパンケネルクラブ(JKC)
でも様々な情報が発信されています。


飼い主の不安は、犬にも伝わる

実は犬は、
飼い主さんの感情をとても敏感に感じ取っています。

「吠えたらどうしよう」
「迷惑をかけたら恥ずかしい」
「ちゃんとさせなきゃ」

そんな不安が強いほど、
犬も緊張しやすくなります。

だから私は、
まず飼い主さん自身が安心することも大切だと思っています。

完璧じゃなくていいんです。

少しずつでいい。

怖がりでもいい。

大切なのは、
“この子に合ったペース”
を見つけてあげることです。

情報が多すぎる今だからこそ、
誰かの成功例をそのまま真似するより、

「うちの子はどう感じているかな?」

を見てあげることが、
一番大切なのかもしれません。


社会化で本当に大切なのは、小さな成功体験である“質”の積み重ね

社会化という言葉だけが独り歩きすると、

「たくさん経験させなきゃ」

になりがちです。

ですが私は、
恐がりな子に対する社会化で本当に大切なのは、
いきなり“量”ではなく、まずは小さな成功体験である“質”

安心できた1回を少しづつ何回も積み重ねることです。

犬は、人間社会で生きていくしかありません。

だからこそ私たちは、
ただ“慣れさせる”のではなく、

「この世界は怖くないかもしれない」

そう感じられる経験を、
一つひとつ丁寧に積み重ねてあげたいと考えています。

そしてその積み重ねが、
吠え・噛み・怯えによる飼い主の挫折を防ぎ、
犬にも人にも“心の平安”を届ける。

私は、約40年現場で犬たちを見続けてきて、
そう確信しています。

犬幸村では、こうした考えを大切にしながら、
犬同士が安心して関われる環境づくりを続けています。

詳しくはこちら:
犬幸村 公式サイト

中島秀輔
ワンズアップ株式会社 代表取締役
犬の幼稚園&トリミング「犬幸村」 代表 中島秀輔

犬の幼稚園「犬幸村」園長 中島秀輔 1986年から約26年間、ペット関連の事業を行う。



横浜そごう、玉川高島屋、グランベリーモール、六本木ヒルズなど、首都圏の百貨店等に店舗を出店しているDOG&CAT JOKERにおいてトリマー兼店長兼店舗統括部長として店舗運営に携わる。



2000年に「ワンニャン幼稚園🄬」設立。業界初の子犬子猫にしつけを教えて販売するスタイルを発案し、JOKER各店にて子犬子猫生体販売の常識を変革する。



トリマーとして各種競技会に挑戦し、SUPER ZOO inラスベガス スーパーモデルドッグ部門3位入賞、JKCトリミング競技会東京ブロック Aクラス最優秀賞受賞。その後全国トリミング・家庭犬訓練競技会 デザインカットコンテスト、ジャペルペットコレクショントリミングコンテストにおいて審査員を務める。

ハンドラーとしてJKCハンドリング競技会全国大会Aクラス最優秀賞受賞。



これらの経験・知識を活かし独立。その後大小200を超えるセミナーも開催し、延べ3,000人以上のトリマーへの指導経験も持つ。



現在は、新潟の燕三条で犬の幼稚園&トリミング犬幸村(けんこうむら)をオープンさせ、延べ1000頭以上のワンちゃんや猫ちゃんへ、飼い主様へ「心の平安」を提供している。

保有資格: ・JKCハンドラーA級ライセンス ・JKCトリマーA級ライセンス ・愛玩動物飼養管理士1級
「慣れさせる」と「怖がらせる」の違いを表現した、安心する犬と不安そうな犬を対比したイラスト

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