言に犬が噛むor咬むと言っても、それにはいろんな意味があることを理解されていない飼い主さんが多いようです。よくある相談で飼い主が誤解されている犬の噛む行為が「咬む」の咬傷事故のような怖い咬みつきを連想されているようです。「噛む」と「咬む」の意味、どちらでも同じような場合もあるようですが、犬のしつけにおいて「噛む」は、子犬が遊びを誘うような歯を当てる甘噛みレベルとします。また一方で「咬む」は相手を警戒、威嚇、防衛反応など、恐怖感を抱きながら必死に本気で反撃してくるレベルと、咬み慣れているタイプ、つまり相手を獲物のように襲い、息の根を止めるために牙を立てて攻撃するように、咬むことで相手に勝ってきた成功体験を積んできた本気の咬みつきレベルとに区分して僕は使い分けています。


では子犬の甘噛みで噛まれる人はどんな飼い主か?一言でいうと、子犬が大好きに感じる人です。人でも幼い頃に近寄りがたい大人と、とても親しみやすい大人がいましたよね。それと同じように、親しみやすく遊んでくれそうな人には甘噛みしてくるのです。そもそも犬が口で表現する行為には人が手で行う行為も含まれているのです。例えば「ねぇねぇ遊ぼうよ~」と子供なら手でちょんちょんとするしぐさを、犬はチョイ噛みしたり服や手、髪の毛を引っ張ってみたりします。また「ママ大好き~」という愛情表現が子供なら抱き着いたりモミモミしたりすることを、犬はぺろぺろはみはみと軽く噛んだりします。このような可愛い子犬の噛むを血の出るような咬む行為と誤解し間違えたしつけをされる飼い主がもっとひどく咬まれるようになっていきます。
目次
間違えやすい甘噛みの接し方
噛みから咬みになりかねない接し方
噛まれるor咬まれる飼い主のやっている特徴
間違えやすい甘噛みの接し方
~子犬を迎えた飼い主さんには必ず訪れる甘噛み攻撃~

小型犬でも痛いですが、柴犬以上の大きさになってくると慣れている僕らでさえまあまあ痛いと思ってしまいます。まして初めて犬を飼った人からすれば苦労する行動の一つでしょう。そもそも甘噛みとは子犬の親しみと遊び心の現れであり、かまってくれる人なら誰でも喜んでじゃれ噛みしてきます。そしてそれが成長するにつれ少しずつじゃれる人が絞られていくようになっていきます。その絞られた人というのは子犬にとっては“大好きな人”になります。つまり人見知りが始まってくるとこのように変化が始まり、これがさらに進むと家族としか遊べない子になってしまい、いわゆる“内弁慶”な子に育っていくのです。家族としか遊べないのに体力がたっぷりある子だと家の中で暴れ回ったり破壊行動などするようになるのでご注意ください。
そこで、甘噛みに対して間違えやすい接し方、つまりその後の関係がおかしくなり問題行動になりやすい接し方をお伝えします。
噛みから咬みになりかねない接し方
一つ目:口をつかんでギュッと握る
特に昔の男の人や、犬に厳しめの人がこのやり方でしつける人が多いように感じます。確かに子犬の甘噛みをすぐに止めさせる効果が早く、その人に対しては甘噛みをしなくなります。いくら純真な子犬でも、警戒心を感じるため、その人には甘噛みしなくなっていきます。
<先行き考えられること>
天真爛漫すでに忘れる子ならばあまり問題にはならないのですが、気の弱い子や根に持つタイプにやってしまうと手に対して恐怖心を与えてしまいます。子犬が成長したある時、手に対する恐怖心がムカつきに変わり、反抗心から威嚇、攻撃に発展し、そのことで相手がひるむと、ひるませた成功体験が積み重なり、さらに自信をもって攻撃するようになっていきます。つまり甘噛みから本気噛みに発展しかねない、最悪のしつけになる場合があるので注意が必要です。
二つ目:「いけないっ!」と強く叱る
これも一つ目同様に、比較的強い飼い主さんの叱りならば一発で止めるくらい効果があります。しかし多くの人は少しづつ強くなっていくので犬も慣れて行き、その結果かなり大声で叱らなければならないことになってしまいます。
<先行き考えられること>
このことも明るい子ならまだ良いのですが、大好きな飼い主さんに遊びを誘ったのに嫌われてしまった、、、などと、気の弱い子だと委縮や警戒心で怯えてしまいます。また興奮気質の犬の場合、叱られたことに恐怖心と興奮が入り交じり、必死に攻撃してくる場合があるので注意が必要です。ですので本当に危ないこと以外、飼い主が興奮して叱ることは避けた方が無難だと思います。
三つ目:相手にせず、ただ無視する
こちらも賛否両論あるやり方だと思います。今回は甘噛みに対しての方法なので、犬の年齢が比較的若い子犬だと想定しましょう。人で言うなら幼稚園、小学生低学年くらいの子供です。この時期の子供が親と遊びたいのは当たり前だと思いませんか?それでも子供は幼稚園や学校で友達と遊ぶ時間が取れるからまだましですが、子犬がずっと家にいるだけで、遊び相手が飼い主だけだとしたらどうでしょうか…?
<先行き考えられること>
しつけ方法の一つで無視は有効な面がありますが、今回の子犬がじゃれたい甘噛みをただ無視するだけだと発散ができず他に当たり散らしてしまうかもしれません。子犬のエネルギーは想像以上に元気いっぱいなので、まずは上手に発散させた後、わがままな要求に対する無視なら効果あるでしょう。
四つ目:痛くて嫌だから逃げる
このことは前述の「無視する」よりも、犬を興奮させ悪化させる可能性があります。
<先行き考えられること>
柴犬などの中型犬以上になると甘噛みも激しくなり、迫力あるうなり声を出すので怖がって逃げる飼い主さんがいます。怖くなる気持ちはわかりますが、このことで犬と飼い主の関係性が逆に、つまり甘噛みという遊びを通じ犬の方が飼い主の上になり、怖がって逃げる飼い主を犬はまるで獲物を捕まえるよう追いかけ回します。
このような例を四つほどピックアップしましたが、似たような事例はいくつもあると思います。たかが子犬の甘噛みですが、接し方を間違えると子犬の成長に悪い影響を与えかねないのでご注意ください。
噛まれるor咬まれる飼い主のやっている特徴
▪遊びたい盛りの子犬を十分に遊ばせていない飼い主 →発散不足
▪部屋で犬をフリーにしながらスマホいじって知らんぷりの飼い主 →要求
▪内弁慶で飼い主としか遊べない育て方をした飼い主 →社会性不足
▪「キャー」「いたたたた~」などやたら高い声を出す飼い主 →興奮
▪痛くて怖くなって逃げまくる飼い主 →獲物化
▪やたらしつこく触りまくる飼い主 →拒否
▪給仕量が少ないのに与える前に「マテ」「おすわり」などでじらし過ぎる飼い主 →飢餓状態
▪急に動き出すせわしない落ち着きない飼い主 →反射
▪強く叱る(どちらかといえば感情的に怒っている感じ)飼い主 →恐怖

ご覧になられていかがでしょうか?まれに先天的な攻撃性のある犬もいますが、ほとんどが飼い主の誤解と知識不足による接し方や育て方が原因になります。もともとは「噛む」という子犬の愛情表現が「咬む」という複雑な問題に変わっていくのです。
子犬の成長はものすごい速さで成長します。生後6か月くらいの年齢ならば人の10倍速で成長します。飼い主が1週間考えるとした場合、人には7日間ですが、子犬の成長で考えるならば2か月以上も体が成長する速度、つまり良くも悪くも変化がとても速いのです。ですので飼い主一人で悩まず、少しでも早めに専門家に相談されることをお勧めいたします。