愛犬の健康を最優先に考える「飼い主さん」へ、私・中島秀輔(犬の幼稚園&トリミング「犬幸村」経営者)が、秋の深まりとともに気をつけたい“犬の冷え対策”について、現場の経験と外部データを交えてわかりやすくまとめたコラムです。情報が多すぎて「何を信じたらいいの?」と迷っておられるあなたに、私自身の“失敗も含めた体験”をもとに、「実践できる選択肢」としてご提案いたします。

目次
犬は寒さに強いと思われがち?実は犬種によって冷えやすさが違う
犬は寒さに強いと思われがち?実は犬種によって冷えやすさが違う
「犬はもともと毛もあるし寒さには強い」と思っておられる飼い主さん、私も長年そう信じていました。しかし実態は、それほど単純ではありません。私が運営する幼稚園でも、「寒そうに丸まってる」「震えている」といったワンコを、10月を過ぎた頃からちらほら見かけてきました。
例えば、外部データとして、北トルコで屋外飼育されていた犬を冬期と夏期で比較した研究があります。冬は身体温度・呼吸数・心拍数が有意に低下しており、寒冷環境が犬の生理値に影響を及ぼすことが明らかになっています。Science Line
また、一般社団法人等が発信するペットの寒さ対策でも、「小型犬・短毛種・高齢犬は低体温・凍傷リスクあり」と明記されています。AAHA+1
このように「犬=寒さには自動対応できる動物」というイメージは、種・毛量・年齢・室内外の環境次第で変わるのです。
私自身、新潟でノーウィッチテリアを飼っていますが、この犬種は比較的寒がりではないのですが、もう1匹東京にいるスムースチワワは、10月下旬でもブルブル震えて散歩を嫌がった経験があります。
ですから、あなたのご愛犬も「うちの子は寒さ大丈夫」と思い込まず、「この犬種・この年齢ではどうかな?」と一緒に見直していただきたいと思います。
秋の冷えが原因で起こる体調変化(下痢・震え・食欲減退など)
冷えは「体を冷やす=免疫や血流が低下する」という連鎖を生みます。例えば、寒冷では“体温維持のために無意識に体がエネルギーを消耗”し、下痢・震え・食欲減退といった体調変化が出やすくなります。
実際に「寒さを感じてウチの犬、急に散歩行きたがらない」「ご飯を食べない」というご相談を幼稚園で多く受けてきました。
また、季節と地域が冷えるほど、糖尿病の犬の診断が多いという研究もあり、寒さが代謝に影響する可能性も示唆されています。Penn Today
つまり、秋の深まり=気温低下のタイミングで「何かおかしいな」と感じたら、“冷え”が背景にある可能性をぜひ視野に入れてください。
犬の“冷え”を見抜くサインとチェックポイント
こんな行動は要注意!「冷えサイン」5つ
私が幼稚園で日々感じてきた「冷えてるかな?」のサインを、飼い主さんでも確認しやすい5つに整理しました。ぜひ、読みながらご愛犬の様子を思い出してみてください。
- 散歩を嫌がる・足取りが重い
- 犬小屋やベッドで丸まり動かない
- 耳先、肉球、お腹が冷たく感じる
- 食欲がいつもより落ちている、または水をあまり飲まない
- 下痢・軟便・震え・ブルブルと小刻みな体の揺れ
これらが1つでも当てはまれば、「ちょっと冷えが進んでるかも」と思って、早めの対応が功を奏します。
肉球・耳・お腹を触ってわかる体温チェック方法
飼い主さんにとっても簡単にできる“触診チェック”をご紹介します。自宅でもできるので習慣化すると安心です。
- 耳の裏/先端 → 冷たく感じたら注意。温かさがあるのが理想。
- 肉球(足の裏) → 冷んやりしていないか。特に短毛・シングルコートの子は冷えやすい。
- お腹(毛をかき分けて) → 触ってひんやりしていないか。体の中心部が冷たいと、体全体の冷えが進んでいる証拠。
また、数値的に体温を測るなら肛門温ですが、飼い主さんが日常的に気軽に使うのは難しいので“触り心地”でまず判断してあげてください。「あれ、冷たいな」と感じたら環境を見直すサインです。
犬の冷え対策は「環境」と「食事」と「グルーミング」の三本柱
秋の冷えを放置せず、ケアしていくには3つの軸で考えるのが私のスタイルです。幼稚園でもこの三本柱をスタッフと共有しています。
室内温度・湿度の理想バランスと寝床づくり
環境対策からお話しします。
- 室温は 20〜24℃ 程度をキープすると安心です。特に夜間、窓際や床近くが冷えやすいため、暖房・断熱・床面の工夫が有効です。
- 湿度も重要で、乾燥していると体が“冷えを感じやすく”なります。目安は 40~60%。乾燥しすぎると皮膚・被毛のトラブルにも繋がります。
- 寝床はフローリング直置きを避け、ヒーターやペット用ホットカーペットなどを敷いて、“冷たい床から直接冷えが入らないよう”にします。毛布やクッションで囲って「自分だけのぬくもり空間」を作るのがポイントです。
私の教室では、冬場に「毛布+安全ヒーター+床マット」の3点セットで、一気に冷え対策を強化しています。
体を温める食材と避けたい冷える食べ物
次に食事面です。
温め効果のある食材としては、たとえば根菜類やかぼちゃ・さつまいもなど、「体を内側から温めやすい食材」を取り入れるのがひとつの手です。もちろん犬の場合、主食はドッグフードですが、副食やトッピングとして、体を冷やしやすい食材を避けるという発想も有効です。
逆に避けたいのは、冷やす効果があるとされる生野菜たっぷりの“人向け”のサラダ食材を多用したり、冷たい水分を多量に与えたりすることです。人間でも「冷えが気になるとき、温かいものを食べる」と思いますが、犬も同様に“内側から温める考え”を持つと良いでしょう。
また、被毛・皮膚の研究では、保湿クリーム(グリセロール・プロピレングリコール配合)が“皮膚バリア機能の回復”を早めるという結果も出ています。PMC+1
このことから、「体を冷やさない食×保湿ケア」は表裏一体だと私は考えています。
被毛を整えるだけで変わる!冷えに強いグルーミングとは
最後に、グルーミング(被毛・皮膚ケア)です。私がトリマー/ハンドラーとして培ってきた経験から言うと、「被毛が整っている=空気層ができて冷えにくい」という関係があります。
具体的には、
- 被毛の長さ・密度を“その犬種・その生活環境に応じて”整える。例えば、室内中心で生活している短毛種でも、冬は少し毛量を残して保温性を高める。
- シャンプーは保湿系シャンプーを選ぶ方が安心です。Companion Animal Hospital of Wakefield+1
- ブラッシングを丁寧に行い、被毛の間に風が通り過ぎないよう“ふんわり毛並み”をつくる。被毛がぺたんとしていると、体表面からの熱の逃げが早くなります。
秋冬の皮膚トラブルを防ぐ被毛ケア
乾燥・静電気・フケを防ぐシャンプー&保湿方法
秋から冬にかけて多いトラブルが、乾燥・静電気・フケ。私も、飼い主さんから「この時期、急にフケが出て…」という相談を多く受けてきました。
実際、「冷たい外気+暖房室内=低湿度環境」が被毛・皮膚の乾燥を招きやすいことは、複数の解説でも確認できます。Companion Animal Hospital of Wakefield+1
そこで有効なケアは次の通りです:
- シャンプー時には「保湿成分入り・低刺激タイプ」を選ぶ。特にセラミド配合の保湿クリームで皮膚バリアを補強した研究もあります。PubMed+1
- 湿度管理は前述の通り重要。乾燥した室内では加湿器を活用するのも一つの手です。
- 静電気が起きやすい環境では、被毛用の“静電気防止スプレー”や“被毛がまとまりやすいブラッシング”を日常に組み込む。
これらを継続することで、「あれ、最近フケが…」という事態をかなり予防できます。
ブラッシングの頻度とタイミングの見直し
次にブラッシングです。被毛ケアの基本ですが、季節の変わり目では「頻度」「タイミング」「方法」を見直すことが大切です。
- 秋になったら、まず被毛全体を“寝相・被毛の乱れ・薄毛・パッド付近の抜け毛”など観察する習慣を始めましょう。
- ブラッシングは1〜2日に1回を目安に、短毛でも軽く撫でるだけで皮下の“冷え感”がないかチェックします。
- トリミングの際には、「寒さに備えて被毛を残す/カットする」判断を行い、室内生活が中心なら少し毛を残すプランを提案しています。
犬の体を“内側から温める”ホリスティックケアの考え方
ここからは、単なる“環境・食事・グルーミング”にとどまらず、「心と体の巡り=ホリスティック」な視点で冷え対策をお話しします。私の理念「犬と暮らす飼主へ“心の平安”をお届けする」にも通じる話です。
心のストレスが冷えを招く?メンタルケアも大切に
意外に思われるかもしれませんが、犬も“心の緊張やストレス”があると、体が冷えやすくなります。狭いスペース・孤立・運動不足などが続くと、血流が滞ったり、自律神経が乱れて冷えに繋がることも。
私も以前、トレーニングだけを重視しすぎて「遊び・安心できる居場所づくり」を怠った結果、冷え対策として部屋を温めてもワンコが丸まって動かないという事態を経験しました。
ですから、
- 散歩だけで終わらせず「遊び+スキンシップ」の時間を持つ。
- 室内でも「あなたと一緒=安心」という居場所づくりを心がける。
という視点を、冷え対策の一部として取り入れてください。
犬の体調を整える“日光浴・適度な運動・安心できる関係性”
最後に、冷え対策として実践してほしいのが「日光浴」「適度な運動」「飼い主さんとの安心できる関係性」です。
- 日光浴:陽のあたる窓辺や庭で5〜10分といった日光浴を習慣に。体内リズムが整い、血流も促されます。
- 運動:寒くなり始めたからこそ、室内での軽い運動(おもちゃ遊び・簡単なトレーニング)を日課に。動かないと“冷えの入口”になります。
- 安心できる関係性:飼い主さんの「あなたを守ってるよ」という態度、声かけ、「やさしく撫でる」などのスキンシップにより、ワンコの緊張が解け、体の巡りも良くなります。
以上を踏まえると、「冷え対策=単なる毛布をかける」だけではなく、生活の“質”を整えることがとても重要です。
まとめ|秋の冷え対策は、飼主と犬の“暮らし方”から見直そう
今日からできる3つの冷え予防アクション
飼い主さんが「明日からすぐできる」冷え予防アクションを3つご紹介します。
- 寝床のチェック — 今日から「床直置き+冷えやすい場所では毛布+マット」を確保しましょう。
- 食事トッピング見直し — 今夜のご飯に「体を温めやすい根菜少し+冷えやすい生野菜少なめ」を意識してみましょう。
- 10分ブラッシング&スキンチェック — 散歩後か室内リラックス時に、「耳・肉球・お腹」を触って冷たくないか確認+ふんわり被毛になるようブラッシング。
季節の変わり目は“グルーミング×幼稚園”で健康維持を
最後に、私が強くお伝えしたいのは、季節の変わり目=“グルーミングの見直しタイミング”でもあるということです。
当社「犬幸村」では、10月下旬〜11月初めに“秋の冷え入り直前プラン”として、
- トリミング時に被毛量の調整(室内犬なら少し残す)
- 保湿ケア付きシャンプーの提案
- 寝床・体温・ブラッシング頻度の見直し
飼い主さんであるあなたにも、ぜひこの“グルーミング×幼稚園(=専門ケア)”の発想を持っていただきたいと思います。ご自宅でも同じように“季節の変化を捉えてケアを見直す”という視点が、愛犬とあなたが“長く、安心して、楽しく”暮らすためにとても重要です。
秋の冷えは、見逃してしまうと「ちょっとした体調不良」を招き、その先に「皮膚トラブル」「免疫低下」「楽しめなくなる散歩」などにつながる可能性があります。だからこそ、「今日はちょっと寒いな」と感じたら、少し立ち止まって“冷えケア”を考えてあげてください。
飼い主のあなたが「この人の言ってることなら信じられる」と感じていただけるよう、私もこれからも現場での実践を通じて、わかりやすく本質的な情報をお届けしてまいります。
どうぞご愛犬との秋冬、より温かく、元気に過ごされますように。
